■霧島便り65
【七情と臓腑】
中医学(東洋医学)では、精神状態の変化が病気を引き起こす原因(内因)と考えます。
この精神状態に基づく病因を「喜・怒・思・憂・悲・恐・驚」の七情と呼びます。
西洋医学でいう、心理面(ストレス)からの分析は、この七情をもとにした学問とも云われています。
人間の体癖(身体の癖、行動の癖)とともに思考癖を読み解きながら、臓腑との関連性を探り導きだします。これを中医学では、特に重要視して学びます。
感情の変化は人間として正常ですし、ある程度の状態なら病気の内因にはなりません。
しかし、急激で強い感情の変化や、長引く感情への執着(恨み、妬み、ひがみ、疑い)は、心身ともに健康状態を悪くさせます。
集中力が持続しない、仕事が進まない、イライラする、雑になる、悪夢をみる、などの症状が目立つようになります。
また逆に、鈍感、鈍重になったり、無頓着、意地悪になったりします。
七情は身体の内からの刺激なので、臓腑を直接傷つけてしまうのです。
気血の乱れは、さらなる感情の暴走を増幅させ、コントロールがきかずに病気を引き起こします。
憂い、悲しみすぎれば「肺」を傷つけ、怖がりすぎれば「腎」を傷つけます。驚きすぎても「腎」を傷つけますし、喜びすぎても「心」を傷つけます。怒りすぎは「肝」、思いすぎても「脾」を傷つけるのです。
つまり、「すぎる」と陰陽バランスを崩し、循環リズムを乱すという考え方です。
これは、自然の法則を軸にした考え方であるとともに、「外因」と「内因」の調和を整えることの重要性を説いているのです。
漢方、食事、料理、気功、鍼灸以外に、自分の七情を知ることも、中庸を保つためには大切なことです。
木津龍馬
