■霧島便り60
【野菜の無人販売所】
霧島に何ヵ所かよく利用するお気に入りの野菜無人販売所がある。
田舎の農道や山道で地元の農家の方々が営む小さな販売所は皆さんもよく見かけるのではないでしょうか。
箱に一品50円~100円入れて買う場所。
スーパーマーケットで売られている野菜がここのところの寒さで、軒並み高値に推移している昨今。無人販売所は一人暮らしの僕にはとても助かるのだ。しかも、形はふぞろいながらめちゃ美味しい。
そんなこんなで、無性に人参と白菜を使いたくなって、朝早く車を走らせた。
ちょうど野菜をおじちゃんが並べている最中だった。
「おはよ~ございまーす」
いっけねー。まぬけなことに百円玉がない!
いつもは小銭大王なのに、なんちゅーこっちゃ。
千円札を一枚箱に入れて、二品だけいただいてその場を離れようとした。
するとおじちゃん。
「あーいかんいかん!百円ないのけ?ならこれもっていかんね。(もっていきなさいの意)」
ダンボール箱にすっげーしこたま何種類も野菜を入れて渡そうとする。千円じゃ田舎でもとても買えない量である。
「あー、おじちゃんありがとー、けど、こんなに食べれん。これだけでいぃから~。」
「若い者が野菜食べんといかんやろ~!」と豪快爆笑イケイケでドカっとわたしてくださる。
しばし押し問答。
「いやいや」「まあまあ」「いーから」「でもー」 ってな感じ。
いくら厚かましい木津でも、こりゃもらいすぎ。
ついにおじちゃんがナイスな提案。
「兄ちゃん、そしたら今日はそれだけもっていきない(もっていけ)。なくなったらまた取りにきない(取りにおいで)。おじさん野菜を追加しちょくから(追加しておくから)。お金は入れんでいいが(入れなくてよいよ)。」
「わ~おじちゃん、ありがとー!うれしー!」
涙ちょちょぎれ。
もちろん、その都度お金はお支払させていただくのだが、なんとも嬉しい心遣い。なんとも嬉しいノリなのだ。
ファンキーだ。
ロックなノリの農家のおじちゃん。
無農薬や有機だなんだと講釈たれねども、まっこと美味しい御霧島の野菜さま。
「おんら(俺たち)は育てた野菜を食ってもらうのが一番嬉しいかいな(嬉しいからな)。」
じ~ん。
じ~ん。
歯のない笑顔と禿げた頭がまっことまぶしい。
ボロい軽トラが、ボロンばろんボロ~ン。と壊れそうな音をたてて走り去った。
とっても寒い朝。
とっても温かいできごと。
おじちゃん!イカすぜっ!
最近毎朝泣かせられる。
押忍 木津龍馬
