■霧島便り47
【紙兎ロペ】
土曜日。品川から浜松へ。
ひと、ヒト、人。
宮崎、霧島に移住してからというもの、めっきり人混みに弱くなった。
各駅停車のこだまもメチャ混み。指定席もメチャ混み。駅員さんに聞くと、静岡から先は空いているらしい。
4C席を探して座る。
窓際4Dには男の子がリュックを抱いて一人で座っていた。
手にはiphoneらしきものを握り、映像をみてクスクス笑っている。
ヤバい…かわいい…。
我慢できずに、「新幹線の中でも映るの?」ときいてみた。
見ず知らずの髭オヤジの質問に物怖じせず「うん。みれるよ」と、あっさり。
あーシカトされなかった。よかった。
「キミひとり?」
「そう。おばあちゃんちにいく。」
「そーか。偉いね。」
「普通だよ。」
・・・このクソガキ(-_-;)
気をとりなおし、「何みてんの?」
「YouTube」
おおお。すげー。小学生からYouTubeという固有名詞がでた。
「ふーん・・・」
しまった。
だいの大人が「ふーん」なんてセリフ、イッキに恥ずかしくなって、勝手に赤面してしまった。うーヤバい。
しばし沈黙。
「おにいさんもみる?」
おおおおおおおおおおおお!なんてイイヤツだ。「おにいさん」なんてイカした言霊だ!!さっきは「クソガキ」なんて思ってごめんな!! 機嫌がよくなったゼ!!内的統制だゼ!!
「あ、、、おじさんだね。はい。」とiPhoneを「さらっ」と手渡された。
メっチャ自然に「さらっ」と。
・・・クソガキ…(-_-;) 内的崩壊だぜ…
画面には『紙兎ロペ』とでていた。前にも19歳のコに聞いたことがあった。
紙でできたウサギのロペと、紙でできたリス?のアキラ先輩が主人公の2分くらいのショートアニメ。
内容は割愛するが、爆笑した。大爆笑である。ビックリした。なんじゃこりゃ。衝撃である。すげー社会勉強になった。ああ、日本の将来が危ぶまれる。
「面白いでしょ」
「うん。」
あじゃ~。これまた「うん」って言っちまった。小学生に向かって「うん」だって…(ToT)あ~恥ずい。ダメな大人全開である。
さすがに新幹線の中では、動画が時おり止まるが、それでも面白かった。
しばし話し相手になってもらった。
右手に富士山が見えた。
はやくも頭には雪が積もっていた。
「おじさん、ガンって治るの?」
その一言で、背景が見えた。
「心が元気になれば治ることが多いんだよ。お医者さんもぜったい頑張ってくれるからねー。」
「ボクがおばあちゃんに会いにいけば元気になるかな?」
「そりゃなるさっ。メっチャなるさ。おばあちゃん、泣いて喜ぶよ。元気100万倍だよ!」
やばい…元気100万倍とか言っちまった。
感動のシーンが台無しだ。
少年はニコッと笑った。
iPhoneを握る手に、もうひとつ、四角いものがみえた。
手作りのお守りだった。
ヤバい。刺さった。
涙をこらえた。
なんだか大人と会話をしているみたいだった。
少年は大きなリュックを背中に担いで静岡で降りた。
こだま号は、のぞみ号の通過待ちのため5分停車した。 その隙に、僕も少年と降りて売店でお菓子を選ばせておみやげに渡した。
いっぱい手にとってくれた。うれしそうな笑顔は子どもらしかった。無邪気さが戻った感じがした。
「ありがとう!」
少年はそう言って、階段を降りていった。
ちょっとした出会い。
ちょっとした時間。
かけがいのない宝物。
薄曇り空から陽が射した。
出発のアナウンスが駅内に響いた。
師走。
めっちゃ
はーとふる。
木津龍馬
