■霧島便り40
【ススキのちから・雑草のちから】
ススキは畑ではなく、荒れ野や耕作放棄地に栽培でき、強烈な生産性を持っている植物です。そのため、ある大学でそれらの研究がなされています。理由は、エネルギー作物として極めて有望な植物だからです。
冬の間でさえ、地上部が枯れても、葉や茎の窒素やリンなどの栄養分が地下茎に流れ、蓄積されます。
エネルギー植物の栽培のためには、リン、カリ、窒素などの栄養分を肥料として与えなくてはなりませんが、ススキはそうした手間がかかりません。
エネルギー作物は農地を譲歩せず、奪い合ったり、森林を破壊して畑を作ることによる環境への悪影響リスクを避けなければなりません。二酸化炭素大量放出が懸念さえれますが、ススキはそうした可能性が低い作物です。
なんと、地下茎に炭素を蓄積する性質があるため、空中の二酸化炭素を固定する作用があると期待されています。
この事実は、エネルギー作物として、究極の特徴を備えているといえるのです。
米国で問題になった、トウモロコシの害虫は、ススキに寄生することが明らかになりました。つまり、トウモロコシを守るために、ススキを利用しようというのです。
このススキの利点を考え、欧米ではススキを栽培することが真剣に検討されています。
問題は実証です。
欧米にとって、ススキは新しい植物です。ススキを大規模栽培した時、「二酸化炭素の放出を抑制し、エネルギーや物質を持続可能に生産できるのか」ということが、研究機関で問われています。
そのヒントが熊本阿蘇にあると考えられています。
阿蘇の草千里では、1000年以上も前から、ススキを萱として利用するために、管理してきた歴史があります。山焼き等、人の手をかけて長年維持してきました。
日本では、「生態学的に最も安定している象」は「森林」なので、放っておくと、森になってしまいます。
だからこそ、管理が必要なのです。
世界中探しても、社会システム上でススキを1000年以上も持続して利用してきた国は、日本以外には極めて希なようです。
この困難なススキの大規模栽培方法のノウハウは、熊本阿蘇に蓄積されてきました。
草千里の土壌を分析すれば、ススキが1000年以上に渡り、二酸化炭素を固定してきたことが歴史的な証明にもなりえます。
その研究が、冒頭であげたある大学でされています。
もしかしたら、放射性物質の問題を解決に導く鍵になるかもしれません。
当たり前とされ、ぞんざいに扱われてきた「雑草種」の力が見直されはじめたのです。
踏みつけられ、ないがしろにされていた雑草に、新たな価値が見いだされることは、なんとも痛快で、ありがたいことだと思います。
木津龍馬