■霧島便り312
【学ぶ】
77歳の父親がとある国家資格を更新するために、試験勉強をしているという。
時代毎に試験を突破しなければならない種類で、今回はスルーすると思っていたが、どうやらそうではないらしい。
当たり前にもう現役は退くものだと勝手に勘違いしていた。
父親と母親の故郷は2時間も歩けば一周してしまう小さな島で、すべての生活が漁業を中心に営まれている。
二人とも、中卒ながら、独学で様々な資格を習得してきた。
自営業で日々働く仕事ぶりは、お人好し、曲がったことが大嫌い、生真面目、頑固、を絵にかいたような職人肌で、「生涯現役」が座右の銘である。
母親は近所の知恵袋的存在。両親とも、生かされているかぎり、世に尽くす、と笑いながら話す。
幼い頃からその背中をみてきた。
趣味もほぼ皆無で夫婦二人で山歩きするくらい。
「贅沢は敵」といい、旅行すらせず、いまだ毎日質素な生活を続けている。酒も煙草も賭け事も一切無し。
仕送りしても、すぐに誰かのために使ってしまう。自分にはケチ。他者には寛大。お人好しだから、ずいぶん利用もされたろうに、そんなことはまったく問題にしていない。
覚えが悪くなってたまらん。
そう言って父親は苦笑いをしていた。
わが親ながら、まったくもってたまらんぜ。
尊敬しております。
国際中医師 木津学
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