■霧島便り29
【秋の七種】
秋の野に
咲きたる花を
指折り
かき数ふれば
七種の花
万葉集巻8第1537番
萩の花
尾花葛花
なでしこの花
女郎花
また藤袴朝がほの花
万葉集巻8第1538番
山上憶良(やまのうえのおくら)が「万葉集」で連続して詠んだこの歌2首が「秋の七種」のはじまりとされています。
春の七草は食用、秋の七種は観賞用などと云われますが、秋の七種に挙げられる植物の中には、薬草として用いられてきたものが6種もあります。
※ハギ(ヤマハギ)
昔は枝や葉を家畜の飼料にしたり、束ねて箒にしたりと、生活に密着した植物でした。
七種のひとつといっても、ハギは草本ではなく落葉低木です。
薬用は「根」の部分です。婦人のめまい、のぼせなどに効果があると言われます。
※ススキ
茅葺屋根の材料として茎は使われます。
ススキには薬効はないようです。
※クズ
感冒薬の葛根湯に用いられるのがこのクズの根、葛根(カッコン)です。
クズの根から作るクズ粉は良質のでんぷんで和菓子などにも使われています。我々日本人には馴染みの深い食材です。
薬用部分は「根」で、生薬名は葛根(カッコン)です。
葛根は発汗、解熱、鎮痙薬として、熱性病、感冒、首、背、肩こりなどに用いられます。
また、花(葛花)も眩暈や悪寒に利用されます。
※ナデシコ
薬用部分は全草です。生薬名はクバク。種子の生薬名をクバクシといいます。
全草・種子ともに消炎、利尿、通経薬として水腫、小便不利、淋疾、月経不順などに利用されます。
●流産の危険性があるので妊婦は決して用いてはいけません。
※オミナエシ
薬用部分は「根」で生薬名は敗醤根(ハイショウコン)。全草部分の生薬名を敗醤草(ハイショウソウ)といいます。
根と全草に鎮静、抗菌、消炎、浄血などの作用があり、腸炎などによる腹痛、下痢、肝炎、腫痛、婦人病などに利用されます。
サポニンによる溶血作用があるため、連用は避けた方がよいでしょう。強度の貧血の場合には決して用いてはなりません。
※フジバカマ
薬用部分は全草で生薬名は蘭草(ランソウ)といいます。エキスには血糖降下作用、利尿作用などがあり、糖尿病、浮腫、月経不順などに用いられています。
※キキョウ
薬用部分は「根」で生薬名は桔梗根(キキョウコン)。桔梗の煎剤はサポニンの局所刺激による去痰作用があります。
鎮静、鎮痛、解毒作用のほか、抗炎症、鎮咳、血圧降下作用などが認められています。
また、鎮咳薬として、痰、気管支炎、咽頭痛などにも利用されています。
少し遅い
秋の七種のお話しでした。
「七草」と「七種」
わざわざ書き方を分けるところに、日本の風情を感じます。
ばいちゃ。
木津龍馬 拝