■霧島便り156
【紫すみれとお花屋のおばあちゃんとクロマルハナバチ】
夕暮れ時
霧島から都城に抜ける道
僕はツツジやらスミレやらを写真に撮っていた
蓮華草に囲まれた田んぼの隅っこのほうで、おばあちゃんが座り込んでなにやら手をあわせている
お祈り…
話を聞くとゴールデンウィークが過ぎれば30年営んでいた花屋を閉めるらしい
開店以来、余って売り物にならないお花を色んな施設などに無料で贈っていたのだそうだ
余りものといってもおばあちゃんの手にかければキレイになる
それでもどうしようもないものは、ニ、三週間に一度はここでお花たちの供養と感謝を捧げてきたのだという
それを30年なんて…
すごい回数だ…
「このコたち(お花たち)のおかげで今まで生活できたかいね(からね)」
おばあちゃんは笑ってそう言った
「子どもたちを大学に行かせることもできたっちゃ」
30年営んできた習慣
感謝と行動
泣けた
今の世の中で、自分の生活、人生を支えてくれた存在に、どれだけの人がこのような祈りを捧げているのだろう
目にみえるもの
目にみえぬもの
親父の島でも漁業を営む者たちは、必ず魚や海の神様に祈りを捧げていたと聞いていた
その風習も、時代とともにだんだん少なくなってきたのだそうだ
ツツジに群がるハチをみておばあちゃんがつぶやいた
「ハナバチやね 黒いから皆嫌がるけどかわいいっちゃ」
「あんたもよく焼けちょるね ツツジがよけいに白くみえるっちゃがね」
思わずおばあちゃんの肩をもんだ
じわ~と
あったかになった
ありがてぇなぁ
木津龍馬 拝
紫菫(野地すみれ)の花言葉は『慎み深さ・謙虚・愛・誠実』そして『小さな幸せ』

