■霧島便り102
【沈黙の臓器・肝臓】
春先、肝臓に疲れが出やすいといわれる理由は、冬場に溜まった毒素をフル稼働で処理してくれるからです。
肝臓はエネルギーをつくり出し、胆汁をつくり、ビタミンを生成合成し、解毒をもしてくれます。実に500種類以上の化学処理をすることから、人体の『化学工場』と呼ばれます。
戦後、飽食の時代に入り、近年では肝臓病予備軍は1000万人以上ともいわれています。
そして、健康指向のもとにわか知識で、肝臓に良い、肝臓の為、と思った行動が実は肝臓病を悪化させていることもあるのです。
肝炎ウイルスに感染せず、アルコールもほとんど飲まない、それなのに肝臓癌になる、というケースがあります。
肝臓癌に移行する基本的なパターンは、肝炎ウイルスとアルコールの飲み過ぎが原因のほとんどを占めていました。
ここ10年の研究から明らかにされた新たな原因としては「脂肪肝」があげられています。
細胞の中には、ミトコンドリアがいます。このミトコンドリアは、細胞が活動するためのエネルギーをつくる重要な役目を果たし、そのミトコンドリアの働きによって、肝臓はアルコールを分解できます。
通常、ミトコンドリアは糖からエネルギーをつくります。ところが、脂肪肝の細胞の中では、脂肪が過剰に入り込みすぎてミトコンドリアに異常が生じます。
そうなるとミトコンドリアは脂肪からエネルギーを
つくりはじめます。
脂肪肝の細胞には糖が入っていきません。そのために肝臓を動かすための脂肪さえもエネルギーに利用する事態に陥ります。
エネルギー造りの負荷がかかるとミトコンドリアにもいずれ限界が訪れます。
脂肪からエネルギーをつくる過程でミトコンドリア自体が弛んで肥大化してしまい、機能不全に陥ります。
この陰性肥大したミトコンドリアの状態を一言で表すなら「ミトコンドリアの死」です。「ミトコンドリアの死」=「細胞の死」です。
死んだ細胞跡に、隙間なくコラーゲンが埋めつくし繊維化状になり、ガチガチに固ってしまいます。
これが肝硬変です。
陰性肥大で死滅したミトコンドリアと細胞が、陽性に変異して固まった状態です。
癌は肝硬変になった頃から発動します。
脂肪肝→肝炎→肝硬変→肝臓癌と進行する順番です。
脂肪肝を起点にした肝臓病を「非アルコール性脂肪肝炎」といいます。
現在、日本の中で「脂肪肝」=『「非アルコール性脂肪肝炎」予備軍』と考えられている人数は約1000万人以上といわれています。
原因は、運動不足、食生活の乱れ、日常生活の乱れ、からくるものです。
現代人がかかえる、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧といった生活習慣病と深い関係があることは一目瞭然です。
木津龍馬
